アストル・ピアソラの音楽を聴き続けてきて20年近くになる。最初の10年はひたすら聞き込み勉強を続けたものの、「この人の曲は演奏してみたいと思うけども、僕なんかが下手な音にしてしまったら失礼というか迷惑というか・・・」と自粛していたところ、クレーメルあたりが軽めのカバーアルバムを出して以来、そこらじゅうの人が演奏するようになってしまい、ひとりで謹慎状態でいるのがバカバカしくなったので少しずつ弾き始めたのが1995年あたりのこと。それ以来様々な形態のアンサンブルの為にせっせと編曲しては、あちらこちらで弾いてきた。
じゃあ、そろそろピアソラのカバー・アルバムでも作ってみようか、と今年に入ってから基本的に家に引きこもってアコースティックな4重奏のための編曲を続けてきて、先日やっとその作業が終わってほっとしているところ。このような偉大な作品をまとめてアレンジするというのは、非常に心躍る作業なのだけども、おかげでここ6週間ほど何も自分の曲を作っていない。心の中の合唱団が「どうするの?お金もらえなくなるよ」と輪唱をし始めたのが先月の末あたりのこと。わかってはいるのだけども、僕にはなかなか複数のプロジェクトを同時進行させるということができないからしようがない。
というわけで、今日はとりあえず確定申告を済ませ、味のしないチャーハンを食べ、仕事場に閉じこもって1月末にやりかけて放置していた曲をリミックス。こちらはダウンテンポなベッドタイム用エレクトロニカにしようと思っていて、すでにある内容をよりシンプルに、より静かな方向に持っていこうと執拗に音質を整え、音数を減らしていく。ハーモニカ、フルート、そしてバイオリンがうまくなじむように隙間を作っていく。DJの松本さんは非常にすばやく曲を作るという、うらやましくなってしまう才能を持っているのだけども、ちゃっちゃと作業をする分個々の音の処理はとても現実的。聞こえないようなところはわりと大雑把。(けなしているのではないですよ。聞こえないから問題ないのです)それにくらべ、僕は細かいところが気になるタイプなので、エフェクターの目盛りをミリ単位で動かし、すべての音が固体で聞こえたときにもしっかりとしていて、なおかつ全体で調和が取れていないと気がすまない。気はすまないけども全ての条件がそろった音を作るようなテクニックはないものだから、だんだん腹が立ってくる。(典型的な演奏家だ・・・)
今日も数時間かけて4分ほどの曲を調えているとようやくトンネルの向こうが見えてきた。
「よし。あとここにパーンとクラッシュでもしつらえたら終わりだな。諸君、よくがんばった。(ひとりだけど・・・)」とAKAIのクラッシュ音にタイムストレッチをかけ始めたところでDAWがフリーズ。PCの中の小人たちに和平を呼びかけてみたもののシカトするものだから、とりあえず外に出てパイプをふかし、部屋のドアからそーっと中を見てみるとやっぱりフリーズしたまま。
むろん、作業をしながら保存をした記憶もない。
今日の午後の成果。
ゼロ。
ナッシング。
逃した魚は大きいというけども、保存されずに消えていった曲は名曲なんだ。
仕事をしなかったのではないのです。
やったけども、どっかにいっちゃったのです。
すみません。
関係者各位。