図書館の本を返そうと江戸川区鹿骨方面をとぼとぼと歩いていると、もっとい不動の前に鎮座するえんま大王像に水をかけている若い女性を見かけた。
そもそも、えんま大王とはこんな方である。
“この大王、人類史上初の死者なり。よってあの世の大王となる。
他に九人の王たちを従え、死者を裁く権限を有する。
私たちは死んでのち三十五日目には、この王の前に立ち
生前についた数々の嘘を調べられる。
この場においても凝りもせず虚言すれば
ただちに舌を根こそぎ抜かれる。
なぜ嘘が見抜けるかといえば、この王
死者の生前の善行悪行がもれなく記載されている
「えんま帳」を持つがゆえである。
嘘をついても屁と思わず、否それをも正当化しようとする
昨今の風潮にいたく立腹され
このたび憤怒の姿をこの地にあらわされた。
心からの反省の念をもって水をかけ、願うべし。
「どうか私のついた嘘を水にながしてください」と。”
「昨今の風潮にいたく立腹され、憤怒の姿をあらわす」とは素敵極まりないけども、なんでこんな間抜けな場所を選んだのだろう?
そしてあの女性はいったいどんな嘘をついたのだろう?
不思議に思いえんま大王像の顔を眺めていると
「お前だけは何があっても許さない」という面持ちで睨み返してきた。
まあ、いっつも睨んでいるのだけども。